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3月3日撮影記

3月3日はひな祭り。
世の中がうれしさで包まれている中、男の私にはこれっぽっちも関係ない。
その日は不思議と早く帰宅できた。
当然ながら「撮影に行こう」とあこさんと約束していた。
猛ダッシュで家へと飛び込みすぐに支度を済ませ受話器に飛びついた。
「えーと、15時10分の在るけど乗る?」
時刻表をペラペラめくる音が数秒したと思うとあこさんは乗れる電車をアプローチしていく。
いつもながら頼もしい限りだ。
「それでいい?」突然聞かれ思わず「OK!」と返してしまった。
が15;10まで残り5分。が、しかし待ち合わせの駅までは少なくとも1.2kmはある。
乗車時間や家を出るまでのタイムラグを考えても4分はある。
不可能な数値ではない。がしかし、最近愛機のMTBの調子が悪くどうも動きがぎこちない。
私の愛機を使用すれば2分あれば十分だが使えないとなると走るしかない。
考えてる暇はなかった。「っち」と軽く舌打ちし私は走り出した。
「いつもの運動するときより走ってるな。」と自分でも苦笑しつつとにかく走った。
「走れメロス」のようにとにかく足を動かした。
―――なんとか走りきった…
陸上が苦手な自分が1kmを4分で走りきれるはずもなくましてや
カメラを持ちコートを羽織った私に勝機は0.1%もない。
あこさんとの駅前の待ち合わせ場所に着いたが
15;10発の列車は発車した後だった。
かすかに列車の音が聞こえるからおそらくそれが15;10の列車の足音だろう。
がしっかりと駅前にはあこさんが待っていた。
「遅いじゃん。まあ…しょうがないけど…」あこさんが不満の声を漏らすがしょうがない。
あこさんの家は駅の目の前なので行こうと思えば30秒でいける距離だ。
その上、何しろ自分が乗るはずの列車を目の前で見送らなくてはいけなかった。
間違いなく悪は私だ。「ご…めん…」ゼーゼーと荒い呼吸をする中で謝った。
電車は20分は待てばもう一度到着する。
「まあ駅で暇つぶしていればいいよ。」とあこさんの提案で駅を散策した。
いつも使っている駅なのに改めてみるといろいろと楽しめた。
あっという間に20分は経ち列車到着の放送が構内に響いた。
さっきまでは列車が発車した後すぐの静けさが駅全体を支配していたが、今ではそれに対抗するかのように列車に乗車する人でプラットホームはにぎわっていた。
と1番線に到着してきた列車は719系の更新車だった。
仙台では確か2編成ほど営業に入っているはずだ。
特徴的なスカート、そしてシングルアームパンタグラフなど719の初期型とは外見が違う。
しかし乗り込むと車内の雰囲気は初期型とほとんど変わりなく運転台も見る限り変わってなかった。
車内は部活帰りだろうと思われる高校生や買い物帰りのおばちゃんなどで午後3時だというのに乗車率はそれなりに高かった。
列車の入れ替えが終わるとゴトン、ゴトン。と音をたて走り出した。
いつも通り流れていく仙台の景色を眺めつつ何枚か車窓の写真をパチリと撮る。
とものの10分弱で仙台駅に到着した。
できれば7番線に到着してくれれば6番線からそれなりの写真が取れたが期待を裏切るように電車は8番線に到着した。
が一様ホームからは2・3枚ほど特徴のあるシングルアームパンダグラフとスカートが更新された前面を撮影した。
詳細用に詳しく大量に撮影してもよかったがあくまでも今日は長町と名取と決めていたので撮影枚数を抑えなくてはならない。
仙台駅では腕慣らしのために6枚ほど撮って長町に行くことにした。
ちょうど「仙台シティラビット6号」があったので飛び乗った。
最初は長町に行きたかったが久々に快速に乗りたくなったのであこさんと一緒に一度名取まで行こうと思う。車種はE721だった。
この列車も込んでいたが最後尾が開いていたのでそこに立った。
E721のディスプレイは車内のことをほとんどの情報を得ることができる。
特に車掌モードでは車内の気温や乗車率が手に取るように分かる。
列車が発車すると速度計が動き出した。
20…30…と加速していく。好調だ。
途中長町、太子堂、南仙台と数分おきに通過する。
対向列車も多く仙台と太子堂の間で2本とそれ違った。
どちらもE721だった。
455系系列が消えてからは主力がE721になったことを実感させられることが最近多くなってきた。
確かにE721は性能はいいが座り心地が悪いような気がするのは私だけだろうか?
しかし455系は国鉄時代のとても座り心地の良い列車だった。
お世辞にも新しいとはいえないが仙台周辺のなかで一番好きだった。
が去年の3月にダイヤ改正にともない廃止されてしまった。
そこからもう1年。時の流れも速いものだ。
あこさんとはつかりが乗ったE721は減速をはじめ名取に到着した。
いつも思うが最大8両しか止まらないのに無駄に長いホームだ。
と駅構内の端の引き込み線に赤い車両が止まっていた。
紛れもなくED−75だった。最近は「EH−500 金太郎」に押され勢力を狭めている。
3番ホームから見れば手で触れるように近いところに座っていた。
チャンスと思い写真を撮った。あこさんとも一緒に撮った。
写真を撮り始めて数分すると701系が3番線に入線してきた。
2ショットと思いファインダーを覗いたが4両の701が並ぶはずも無く同じ写真に入れると701が豆粒のようにしか写らない。
と701が発車した。発車すればいやでもED−75と並ぶ。
が普通にとっても面白くない。あこさんは通常通り撮るようでもうファインダーを見つめている。
オリジナルでいくか・・とそう思い設定を変える。
後方のED−75をそのままに701を流す。
この方法はシャッター速度が落ちるのでぶれやすい。
三脚のない私はぶれる可能性が高い。が設定を変えなおすには時間が無い。
そのままシャッターを押した。案の定見事ぶれてしまった。
が感傷に浸っている暇は無かった。
すぐに到着が電車のアナウンスがなったのでプラットホームの端っこに走った。
その後も何度が電車が到着し、そのたびに私とあこさんは走った。
ちょうど列車の波も止まり私の好きなコーヒーとベンチで休憩していると一人の女性が声をかけてきた。「あの・・次の列車は仙台に行きますか」
と見ると行き先は「小牛田」になっていた。当然ながら仙台は通る。
「あ・・はい。通ります。」と答えると女性は礼を言って来た701系に乗り込んだ。
その電車に私たちも発車間際に乗み込んだが先頭に行き立った。
速度は同じなのだろうが乗り心地でずいぶん違うと速度も違うように見える。
701はやはりE721に比べゆれる。揺れるとずいぶん速度感が違う。
と正面の車窓をあとさんと楽しんでいるといつのまにか太子堂についていた。
太子堂からは長町が見えるほど近いのですぐに長町に到着した。
―――相変わらず恐ろしいほどの列車だ。
長町駅は島式ホーム1本な上、貨物、新幹線、旅客車両、と見れるから仙台の列車全てを見れる。といってもおかしくない。
約3分おきに来る列車では常にカメラの電源を付けていて十分だ。
時は5時。ラッシュアワーが始まる時間だ。
さすがに体の芯は十分冷え、あたりは暗くなってきた。
がまだまだといった風にカメラを握った。
とその時併走している新幹線に小さなランプが見える。
見ると幅からE3だろうか?あこさんにも聞いたが「E3」とのこと。
「はやて、こまち」だろう。と思いカメラを到着してくる719に向けた瞬間だった。
「コォー」と独特の音を立てて走り去ったのは銀色の車体に独特の緑。
E3 2000番台だった。まだ試運転でしかない列車だ。
のちに「つばさ」として導入されるだろう。
――それを見たあこさんもはつかりもE3が走り去った線路をただ見つめていた。
「あのより目、E3 2000だよね・・」「そうだな・・・」
ぽつぽつと会話が続くが二人ともショックは大きかった。
その後も写真を撮ったがどうもE3の影響で調子に乗らず結局そのまま帰ることになった。
仙台駅に着いたのは6時近かった。プラットホームは背広を着た人であふれかえっていた。
帰りの電車も非常に込んでいて立ち席だった。
「今日は、つかれた・・」とあこさんがつぶやいた。
「ホント、つかれたなぁ・・」今日の移動はほとんど立ち席だった上私は相当走った。
いつもの見慣れた夜景が目に入り乗車駅が近づいたことを知らせてくれた。
今日は早く寝よう・・とそれぞれ2人は心に誓い散っていった。

 

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