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SLを求めて

第一章「C11 325」

6月8日の7:00分に起きもぞもぞと準備を始めた。
今日は6月14・15日に走る「さくらんぼSL」の試運転を見に行くことになっている。
峠に行ったときの友達T氏とそれになんとなく付いてきたR氏
そしてI氏の3人と行動を共にすることになる。
もともとこの試運転のきっかけを知ったのはI氏の祖父・祖母の家が左沢線沿線だそうで、 「左沢線沿線の人はSLの煙に注意してください」という手紙が来たのがきっかけらしい。
それでI氏が誘ってきたのである。
もともとI氏とT氏と私、485はつかりは鉄道ファンなので、苦は無いが、T氏にただ付いてきたR氏は楽しいか分からないプランである。
果たして私たちの足を引っ張らないか心配である。
それはともかく、私は日本を代表する名機、C11を見ることになる。
まだ私はSLの力強さを間近で見たことが無い。
確かに臨時列車としてホームに止まってるのは見たことがある。
しかし、走っているSLを超至近距離で見ることになるはずだ。
私は心を踊らせ駅に向かった。
いつもI氏と旅行に行くときはI氏が一番早く集合場所に着いている。
特に理由も無いのだが、ちょっとした気持ちで一番についていたかった。
仙台8:47発の快速電車なのだが、待ち合わせの時間8:40より30分早い、8:10についていた。
しかし、私は結構人を待つというのが苦手なのだ。
何かしら変な心配ばかりして電話を入れたりしてしまうのだ。
15分間I氏が来るまで心をハラハラしながら待っていた。
8:35分予想より皆早く来ていた。
早速、いつのもように乗っている仙山線にのった。
車両はまた719系だった。
しかし、私は719系の4人用ボックスシートがとても好きだった。
ドア付近にあるロングシートの部分はどうも好きなれないのだが4人でわいわい旅行ができるボックスシートの方は嫌いになれない。
しかし時代の流れも変わっている。今最新鋭のE721系は頭の部分が硬くできていて、飲み物を飲もうとして頭をゴツリとしてしまう始末である。
やはり時代の流れがゆっくりだった一昔の方が乗り心地はいいのかもしれない。
しかし、そんな小さな考えも友達からの話ですぐさまどこかへ飛んでってしまった。
4人でわいわいしゃべっている内にいつの間にか仙山トンネルに入っていった。
車内に轟音が響いた。
しゃべっていた私たちもあまりの轟音で声が遮られしゃべらなくなった。
県境を越え、ついにトンネルを出た。
R氏が窓を開けた。標高がそれなりに高いものの暖かい風が入ってきた。
日本海側の空気を久々に感じた。
今日の山形は27℃になるといっていた。
気持ちいい風を受けつつ私たちの乗った電車は峠を降りていった。
山寺を横目に越え、ついに山形の都市が見えてくるようになった。
奥羽本線とも合流した。ついに北山形まで来た。
左沢線ホームに目をやるとホームには人がちらほらSLをまっていた。
しかし、山形の住民かよほどの鉄道マニアしか知らないはずなので人は少なかった。
それでも山形駅周辺には相当の数の親子ずれがいた。
私たちは山形で撮影した後、左沢線で先回りして東金井までいき、撮影する予定だ。
自由行動の指示をだしばらばらに分かれた。
さっそく山形に着くとまずSLを見に行った。
しかし、1番線ホームヘ行ってしまった。
間近でSLを見たかった私は少しがっかりしてしまったが、それでも写真の構図はよかったので数枚スナップを撮った。
写真を撮った私はすぐさまSLのいるホームへ向かった。するとI氏が既にいた。
近くで見て初めてC11 325ということが分かった。
ホームは煙と石炭のにおいでいっぱいだった。

第二章「撮影」

私たちは先回りするためキハ101型に乗り込んだ。
車内は満席だったがそれでもカメラを持った人はほとんどいなかった。
もちろん山形なので外気は暑かったが車内は冷房が利いていたので苦は無かった。
気動車独特のエンジン音を車内に響かせ、出発した。
さすがに高性能気動車と言われるだけあって加速はなかなかだった。
北山形までは奥羽本線と併走しているが北山形駅で大きくそれる。
その証拠に奥羽本線と左沢線のホームは別物といっていいほど離れている。
ホームから溢れんばかりに親子ずれがいた。
カメラを持った人もいたが親子連れのほうが多かった。
北山形を抜けると直線が現れた。そう、ここが私たちの撮影する場所だ。
数分すると東金井に到着した。さすがに人は多かったが気にする程度ではなかった。
すぐさま撮影ポイントをさがしSLを待つ。直線なので編成全体が入りそうだった。
すこし移動をしてさらにいい写真を撮ろうとするがいまいち決まらない。
しょうがないので先ほどいた場所にとぼとぼ戻った。
何分待っただろうか?カメラの構える場所も決まり落ち着いたときだった。
遠くの方で「ポォー」という汽笛が聞こえた。そうついにSLがくるのだ。
まだ走ってる汽車を見たことがない私はとても心を躍らせた。
しかしその反面、私がうまく写真を取れるかという不安にも襲われた。
ついに煙が見え始めた。決意を決めファインダーを見つめた。
最大ズームをするとSLの姿が見えるほど近づいていた。
1枚・2枚・3枚と連写を重ねていく。そのたびズームアウトしていく。
そのたびになぜか懐かしさを感じた。
しかし途中でその作業をやめた。1枚に賭けてみたくなったのである。
5秒じっとファインダーをのぞいていた。シャッターボタンを握りなおす。
今だ!!!!シャッターをぐっと押した。
カッシャっという軽い音がするとともに私たちの真横をズッシャズッシャという轟音をたて力強い足取で走り去って行った。
SL
SLの車体は見えなくなったものの、汽笛は遠くの方で聞こえた。
残っている黒い煙がいつまでも見えているように思えた…

第三章「帰路での回想」

左沢線のある駅に近くにI氏の祖母がいるということでI氏は一度山形まで私を見送ってから行くそうである。
R氏とT氏は「400系つばさ」の写真を撮ってから帰るそうだ。
R氏は素人なわりにはよく付いてきてたし、SLに興味を相当持っていたので今度も誘うかなとも思った。
山形駅で3人に見送りを受け、電車は出発した。
もう一度SLの写真を見直した。
撮ったときは満足していても改めてみるとよくない写真に見えたりするからである。
まさしくそうだった…
読者の皆さんはお気づきだろうが、極端に近すぎてのどかな背景が写っていない。
それなのに余った部分に見物人が入ってしまった。
まあそれでもいい抱負になっただろう。
そう思うしかなかった。車窓を見た。面白山駅にもう少しで着くころだ。
あと少しで仙台だ。何か懐かしい気持ちになった。
それも「C11 325」という懐かしい存在を心に刻んだからだろう。
電車は私の家に向かってどんどん進んでいった。

 

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